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親族が後見人になる場合に知っておくべきポイント

成年後見制度は、利用の仕方によってはとても良い制度です。
しかし、制度について、世の中で周知されていないことや、誤解をされていることが、まだまだ多いようです。

今回は、実際に「成年後見制度」を利用しようとした場合に、

◆ 誰が成年後見人等(成年後見人・保佐人・補助人)になるのか?
◆ 本人の親族が成年後見人等になった場合、どういったことをすれば良いのか?
◆ 本人の親族が成年後見人等になった場合、なにをしなければならないのか?

について、ご説明させていただきます。

1. 誰が成年後見人等になるのか

本人の判断能力が低下し、成年後見制度を利用する場合、本人または4親等内の親族等が、本人の住所地を管轄する家庭裁判所に成年後見等開始の申し立てを行うことになります。

この際、申立書には『成年後見人等候補者』を書く欄があります。
この欄には、成年後見人等になって欲しい人を記載しますが、自分がなりたい場合はご自身の名前を記載することにより、成年後見人等に選任される可能性があります。

ただ、あくまでも可能性であり、本人の子供または兄弟だからといって、必ず選任されるわけではありません。

すべての家庭裁判所で統一された取扱いがされているのかは不明ですが、これまでの経験上、親族間で争いがなく、その方が後見人等になることに反対している親族がいない限りは、候補者に記載をした親族の方が選任されることが多いように思います。

反対している親族がいるかどうかについては、申し立ての際の添付書類である「親族の同意書」が提出されているかで判断されます。

ちなみに「親族間の争い」といってもピンとこない方も多いかもしれませんので、親が認知症になり、その親の財産を実質的には長男が管理しているケースを一例に取り上げてみます。

このケースにおいて、成年後見制度を利用することになり、長男が申立人となり、自らを後見人等候補者として記載して申立てを行ったとします。

常日頃から、他の親族である長女や次男が、長男の金銭管理に不審感を抱いていた場合、成年後見制度を利用することには賛成だが、成年後見人等に長男がなることは反対することもあります。
こういった場合は、原則として長男はもとより、長女や次男など他の親族が後見人等に選ばれることはなく、司法書士や弁護士といった専門職後見人が選任されることになります。
※最終的には家庭裁判所の判断によります。

そもそも、『未成年者、 成年後見人等を解任された人、破産者で復権していない人、 本人に対して訴訟をしたことがある人、及びその配偶者または親子、 行方不明である人』は、欠格事由に該当するため成年後見人等になることが出来ません。

逆に、上記の欠格事由に該当しないのであれば、遠い親戚であっても、血の繋がりがない友人でも、成年後見人等候補者に記載してあれば、成年後見人等に選任される可能性はあります。

ちなみに、現在の東京の家庭裁判所の取り扱いでは、親族等が成年後見人等になる場合、本人に一定の流動資産(500万~1000万円)があると、司法書士や弁護士が監督人として選任されるか、または、「後見制度支援信託」という制度を利用し、金融資産の大半を信託するかを選ばなければならない仕組みになっています。
※後見制度支援信託については、こちらの記事の4をご参照ください。

なお、成年後見人等候補者欄に「誰も書かない」という選択もできます。
その場合は、裁判所の判断によって、事案により、弁護士・司法書士・社会福祉士などが選ばれることになります。

2.親族の方が成年後見人等に選任された場合

実際に、親族の方が成年後見人等に選任された場合を取り上げてみます。 

基本的に、後見人が親族であろうと、司法書士や弁護士の専門家であろうとやるべきことは変わりません。

親族であるからといって、後見業務で何か優遇されるといったことは、ほとんどありません。

逆に、親族としては心情的に違和感を感じる場面が多々あるでしょう。
今まで親と同居して様々な支払いや、預貯金の管理をしていた方であっても、後見制度を利用して「成年後見人」になった瞬間、その立場は法律で権限を与えられた「法定代理人」になります。

そのため、まずは年間の収支予測を立てて、現在の財産の状況が分かる財産目録を作成し、毎月どういった収入があり、どういった費用を支出したのかを領収書と共に保管する必要があります。
施設に入所するのであれば、今後の収支の予測を立てた上で、施設に入所することの必要性や、収支的にやっていけることを疎明し、裁判所の許可を得なければならなくなります。
※不動産を売却する場合も、同様に裁判所の許可が必要となります。

また、年に一度は、家庭裁判所に対して「財産目録の提出」や「業務報告」をしなければなりません。
この報告をしなかったり、不備があれば、調査人が選任され、適正に後見業務が行われているか調査が入ってしまう可能性もあります。
そして最悪の場合、後見人等を解任されてしまうこともあります。

こういった義務が課されることに対し、「なぜ自分の親の面倒を見ているだけなのに、そのことについ逐一裁判所に報告したり、許可をもらったりしなくてはならないんだ!」と不便さを感じられる方も少なからずいらっしゃいます。
しかし、今までは、親の通帳やキャッシュカードを管理して、親の代わりにお金を下ろしたり支払ったりしていたとしても、それは親自身から頼まれてやっていたので「代理行為」になりますが、親が認知症になり「お願いする意思表示」ができない状態となってしまうと、便宜上財産管理をしていたとしても、それは正式な代理行為とはいえません。
後々、特に他の親族との間で問題になってしまうこともあります。

不動産などの重要な財産の売却や、有価証券の処分または定期預金の解約などは、ご本人の意思確認がしっかり行われますので、本人が認知症の場合は手続きすることは困難です。
しかし、成年後見制度を利用することによって、成年後見人等には、強力な権限が与えられ、預貯金の引き出しや、財産の処分、様々な契約が可能となります。

カタいように思われるかもしれませんが、生きている人の財産の管理・処分権限を与えられるのですから、制度を利用した責任と義務は受け入れ、たとえ親族でも「人の財産を預かっている」という意識を持つことが必要です。


3.後見監督人が選任された場合

一定の財産がある場合は監督人が選任される場合があることは前述のとおりですが、他にも、後見人の業務に問題があると考えられる場合や紛争性のある場合、そのほか専門家の関与が必要だと思われる場合には、後見監督人が選任されることがあります。

では、後見監督人が選任された場合に、親族成年後見人は何をすればよいのでしょうか?

後見監督人の役割の主なものは、「成年後見人等が行う事務の監督」、「後見人への同意」、「利益相反時の代理」、「解任請求」等ですが、今回は、後見監督人の詳細な役割ではなく、あくまでも後見監督人が選任された場合に、親族後見人は何をすれば良いのかについてお話しさせていただきます。

後見監督人が選任された場合、まず必要になってくるのが「成年後見人等が行う事務の監督」への対応です。
後見監督人はいつでも後見人等に対し「後見事務の報告」と「財産目録の請求」をすることができます。

実際には、特段の事情がない限り、抜き打ちで報告を求められたりすることはなく、定期的に(1年に数回程度)、報告書の提出や事務の報告、通帳等の原本確認を求められ、後見業務が適正に行われているかチェックされる場合が多いです。

1年に数回程度とは言え、この報告を理由もなく拒否したり、報告したとしても内容等によって、後見業務に問題があると判断されれば、後見人の職務停止や解任請求が行われてしまう場合もありますので、注意が必要です。

また、後見人が被後見人に代わって、営業もしくは民法第13条第1項に掲げる行為をする場合は、監督人の同意が必要と定められています。

民法第13条第1項に掲げる行為とは、借財、不動産の処分、訴訟、遺産分割など重要な行為のことをいいますが、これらの行為を行う場合は、後見人は監督人の同意をもらう必要があります。

したがって居住用不動産の処分の場合は、監督人の同意を得た上で、家庭裁判所の許可ももらわなければなりません。
少々面倒に感じるかもしれませんが、監督人がついている限りは仕方ありません。

ここまでの内容をお読みいただいた限りでは、後見監督人が「面倒な存在」と思われる方が多いかもしれません。

しかし、良い面もあります。

その一つとして、年1回する必要がある「家庭裁判所への報告をする必要がない」という点です。
家庭裁判所への報告は、後見監督人が代わりにしてくれます。

また、後見業務を行っていく上で、「この場合はどうしたら良いのだろう」「この行為は後見人がやっても良いのだろうか」と悩むことや、様々な問題に直面することが多々あります。

この時、通常であれば、家庭裁判所に相談することになるのですが、やはり裁判所というのは一般の方には何となく「敷居が高い」のではないでしょうか。

しかし、後見監督人が選任されている場合は、基本的には後見人の監督は「裁判所」ではなく「後見監督人」が担当することになるため、そういった悩みや疑問を裁判所ではなく、後見監督人に相談できます。

一個人の司法書士や弁護士であれば、裁判所よりは少なからず相談しやすいのではないかと思います。(当然、担当の後見監督人によって対応は様々なのかもしれませんが…。)

個人的には、後見監督人に就任している場合、後見人に何も相談されずに勝手に色んなことをされる方がよっぽど困るので、質問や相談は大歓迎です。

いかがでしたでしょうか?
今回は、親族後見人についてお話しさせていただきましたが、これから親族の成年後見人にはなろうとしている方、すでに後見人に選任されている方、親族が親族の後見人をされている方など多くの方の一助になれば幸いです。

当窓口でも、任意後見・法定後見に関するご相談はもちろん、その後の手続きや実際の後見業務の受任もしておりますので、お気軽にご相談ください。

私たちのサービスが、お役に立ちますように。

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