ここ最近、テレビや新聞、インターネットなどで「家族信託(民事信託)」という言葉を目にする機会が増えてきました。
皆様もどこかで目や耳にされたことがあるのではないでしょうか。

家族信託(民事信託)は、上手に活用することで、ご希望に沿った認知症・相続対策の実現や、障がいをもったお子様がいらっしゃる家庭の「親が亡くなった後のサポート体制の構築」などが実現できる、非常に良い仕組みといえます。
また、これからの日本において、その活用の範囲や可能性は、さらに広がっていくことが予想されます。
ただ、その反面、家族信託(民事信託)の利用にあたっては、注意点やリスクも多く、法律や税金などの専門的な知識も必要になります。

今回は、現在注目を集めている家族信託(民事信託)について、入門編の位置づけとして、知っておくべき3つのポイントをご説明します。

 

ポイント1.家族信託(民事信託)とは?仕組みと必要な条件について

そもそも、家族信託(民事信託)とはどういったものなのでしょうか?

「信託」とは、ご自身の財産を信頼できる人に預けて、目的に従って財産の管理などをしてもらうことを言います。
そして、特に信託の中でも、信託を業(なりわい)とする「信託銀行」や「信託会社」などが行わない信託を「家族信託(民事信託)」と呼んでいます。

つまり、信託を業としていない信頼のおける方に、ご自身の財産を託して、目的に従った管理などをしてもらうことが、家族信託(民事信託)ということになります。
※「家族信託」という言葉は、「一般社団法人家族信託普及協会」の登録商標であり、正式な法律用語ではありません。

次に、家族信託(民事信託)をするにはどうしたらよいのでしょうか?

家族信託(民事信託)を行うには、次の3人の当事者が必要になります。

1.委託者・・・財産を預ける人
2.受託者・・・財産を託される人
3.受益者・・・預けられた財産から利益を受ける人

※委託者と受益者は同じ人でも構いません。(自益信託)
※委託者と受託者は1年間に限って同じ人でも構いません。(信託宣言による自己信託)

文章で説明をすると「委託者」が自己の所有する財産を、信頼できる「受託者」に託し、「受託者」はその財産を管理・運用・処分等をすることで生じる利益を「受益者」に与える仕組みになります。
例えば、委託者が所有していた不動産を信託した場合は、その不動産の管理・処分等の権限は受託者に移動し、その財産の運用益や利用権は(「受益権」といいます)受益者に帰属するイメージです。

委託者 → 受託者(管理・運用・処分権限)
委託者 → 受益者(運用益や利用権)
受益者 → 受託者(受益権を行使)

次に、家族信託(民事信託)を利用する方法ですが、次の3つの方法があります。

今回は、①の「信託契約」による信託の設定を前提に説明をさせていただき、その他の2つについては、別の機会にご紹介します。

① 信託契約による設定
② 遺言による設定
③ 信託宣言による設定


信託契約を行う場合、委託者と受託者の契約で、信託が設定できます。
つまり、受益者は契約の当事者にはなりません。

委託者と受託者の契約だけで、受益者にも影響する契約ができてしまうのです。
裏を返せば、受益者がまだ産まれたばかりで「契約能力」がなかったとしても、受益者になれるということです。

ただ、実際には、受益者の方にも信託契約の内容の共有や理解をしてもらうために、3者間で契約することが多いです。 

 

ポイント2 家族信託(民事信託)でできることを知っておこう

家族信託(民事信託)でできることは、その柔軟性によりとても深く広いと言えます。
具体的なケースや細かい内容については、別の記事でご説明させていただきますので、今回は3つの特徴を簡単にご紹介します。

① 民法の規定に従わない遺産の承継が可能になる

日本では、相続人の相続順位が法律(民法)で決まっています。
また、自身の相続以外の相続については、財産の承継方法は指定できません。

しかし、民事信託契約を利用することで、財産の承継を自由に設定できます
例えば、自身の死亡後に信託した特定の不動産については、まずは次男に、次男に相続が発生した場合は、長男の息子(孫)に承継させるといった設定も可能です。

② 成年後見制度では実現できないことが可能になる

成年後見制度を利用してしまうと、財産の処分や相続税対策ができなくなるという話を聞かれたことがある方は多いのではないでしょうか。

成年後見制度は、ご本人の権利や財産を守ることが趣旨ですので、リスクのある投資や財産運用は基本的には認められません。

ですから、ご本人が後見制度を利用する前に「自分がボケてしまった後も家族のために資産活用や相続税対策をしてほしい」と希望していても、その願いを実現することは難しいと言えるでしょう。

しかし、家族信託(民事信託)を利用することで、受託者の裁量で積極的な資産活用や運用も可能となります。

もちろん、委託者がボケていないときに契約をしていること、その行為がその契約において定めた信託の目的に沿っていることが大前提です。

③ 残された家族の生活を守ることができる

「親亡き後信託」といった言葉を目にしたことはありますでしょうか?

これは、障害を抱えているお子様がいる家庭においても、通常の順番であれば先に親が亡くなることになります。

その場合、残されたお子様は、誰かのサポートを受けなければ生活することが難しい状況となります。
例え、親が生前に遺言で多額の財産を残してあげた場合であっても、それを利用する能力が不足している場合は、希望は実現できず、場合によっては、悪い人間に取られてしまう危険性もゼロではありません。

こういったケースにおいて、信頼できる親族などを受託者として財産を信託し、お子様のサポートを目的として、管理・運用をしてもらうことを契約します。
この契約に基づいて、お子様は親が亡くなった後も安心して生活をすることができます。

なお、無償では受託者に過度な負担がかかってしまいますので、ある程度の報酬を支払うことが多いです。
報酬については、信託財産の中から契約内容に基づいた金額を支払うことができます。

このほかにも、いろいろな活用方法があり、使い方次第では現在抱えているお悩みを解決できる可能性もあります。

ただし、家族信託(民事信託)は、便利な反面、いろいろなリスクがあります。
また、無理に家族信託(民事信託)を利用しなくても、ほかの制度で対応できてしまうこともあります。

利用にあたっては、金銭的・税務的なことはもちろん、想定外の事態が生じた際に、当初の契約内容では対応ができないこともあります。

信託契約は、とても重要な契約であり、場合によっては変更ができなくなってしまうケースもありますので、利用を検討している場合は、専門家への相談を必ず行うことをおススメします。


ポイント3 遺留分の問題について

家族信託(民事信託)は、民法の規定とは異なる取扱いができ、またその活用方法も多岐にわたるため、魔法のような制度に思われる方もいらっしゃるかもしれません。

確かに、家族信託(民事信託)は、非常に可能性を秘めているため、今後の活用次第では社会全体に大きな影響を与えることになると言えます。

しかし、いくら民法の規定と異なる扱いができるとはいえ、すべてが認められる状況ではありません。

特に「遺留分」については、現状、「受益権は遺留分の対象になる」という想定をしておく必要があります。


遺留分がある相続人がいる場合、その遺留分に抵触する受益権の移動が行われると、その受益権は遺留分減殺請求の対象になります。

ですから、遺留分のある相続人がいる場合に、その相続人に一切財産を残さないといった内容の信託を設定したとしても、その方の遺留分については、無視することはできません。

ですから、遺留分減殺請求が想定される場合であっても、それを見据えた信託契約を設定しておくことも重要と言えます。

なお、収益不動産料など可分のものであれば、当該遺留分に応じた金額を払うことで、物件が共有になったりすることはないので、信託契約の内容に従った管理・処分ができます。

家族信託(民事信託)は、その柔軟性や汎用性から、他の法律行為と比較して、より高度な専門知識と事情にあわせたオーダーメイドの対応が求められます。

インターネット上の契約書のひな型を利用することや、ほかの人が使ったものを流用することは非常に危険であり、様々なリスクが生じてしまいます。

安易な利用は行わず、専門家に相談をしながら検討することをおススメします。

そして、家族信託(民事信託)において、最も大切なことでありすべての前提となることは、信託契約の当事者の「信頼関係」です。

ご自身の財産を信じて託し、託された方は目的に従って管理することになります。

信託銀行などと違って、これは当事者間の関係性がすべての基盤になります。
制度の利便性ばかりを追求する前に、どなたとだったら信託関係になれるかはしっかりと検討する必要があります。

家族信託(民事信託)は、これからの時代、ますます活用され、さまざまな希望を実現できる制度と言えます。

一度、直接ご相談をしたい方、話を具体的に聞いてみたい方は、ぜひ専門家にご相談されることをおススメします。

家族信託(民事信託)を取り扱っている(取り扱える)専門家は、まだ多くはないのが現状です。
弁護士や司法書士であれば、だれでも対応できるという業務ではないので、注意が必要です。

当窓口には、民事信託の専門資格である民事信託士(※)であり、家族信託普及協会の会員である司法書士が在籍していますので、柔軟なご対応が可能です。
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私たちのサービスが、お役に立ちますように。

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